サッカーの試合中、コーチや保護者からよく飛ぶのが「もっと周りを見て!」という言葉です。でも、言われたお子さんはボールばかり見ていて、まわりの味方も相手も目に入っていない。パスを出せる場面で気づかず、取られてしまう。見ているこちらは、もどかしくなりますよね。
ただ、「周りを見ろ」と言われても、見えないものはすぐには見えるようになりません。視野の広さには、実は体の状態が関わっています。この記事では、周りが見えるようになるための土台を、体の使い方の面からお伝えします。
「周りを見ろ」と言われても、見えないものは見えない

周りが見えないお子さんは、注意が足りないわけでも、やる気がないわけでもありません。ボールを扱うことに精一杯で、顔を上げる余裕がない、というのが実際のところです。
足元のボールに気を取られていると、視線は下に落ちたままになります。頭では「見なきゃ」とわかっていても、体に余裕がないと、なかなか顔は上がりません。まず必要なのは、顔を上げられるだけの余裕を体につくることです。
顔が上がるかどうかは、気合いや性格の問題に見えて、実は体にどれだけ余裕があるかに大きく左右されています。ここに気づけると、お子さんへの関わり方の糸口も変わってきます。
力むと、視野は自然とせまくなる
あまり知られていませんが、緊張して体に力が入ると、視野はせまくなりやすいと言われています。人は力むと、目の前のことだけに意識が向いて、周りが見えにくくなります。これはサッカーに限らず、はじめての場所や緊張する場面で、誰にでも起きることです。
体が固まると、首も目も動きにくくなる

肩や首にぎゅっと力が入って固まると、顔を左右に向けたり、視線をさっと動かしたりする動きも小さくなります。ボールに力みながら向かっていると、体も視線もそこに縛られて、周りを見る余裕がなくなってしまうわけです。だから「見よう」という気持ちがあっても、体のほうが追いつかないことがあります。
力が抜けている子は、顔が上がって周りが見えている
反対に、体に余計な力が入っていない子は、ボールを扱いながらでも顔が上がりやすく、自然と周りが目に入っています。首や目が楽に動くので、味方の位置や相手の動きに気づける。判断が速い子は、頭の回転が速いだけでなく、周りを見られる体の状態になっていることが多いのです。
つまり、視野の広さは「見ようとする意識」だけでなく、「周りを見られる体の余裕」から生まれている部分があります。ここは、性格や才能ではなく、体の使い方として変えていける部分です。
ここが変わると、「見えていないのは仕方ない」という前提そのものが変わってきます。周りが見えるようになる余地は、どのお子さんにも残されています。
「顔を上げろ」だけでは、根っこは変わりにくい
周りを見せようとして、「顔を上げて」「首を振って」と声をかけることは多いと思います。でも、体に力みが残ったままだと、その場では顔を上げても、プレーに集中するとまた下を向いてしまいます。根っこにある体の余裕がないと、なかなか続かないのです。
逆に、余計な力が抜けて体に余裕が生まれると、顔を上げることが特別なことでなくなります。無理に意識しなくても、周りが目に入るようになっていきます。声かけが効くようになるのも、この土台ができてからです。
周りが見えると、プレーそのものが変わってくる

顔が上がって周りが見えるようになると、プレーの選択肢が一気に増えます。ドリブルで運ぶか、味方にパスを出すか、その場で選べるようになる。相手が寄せてくる前に次の動きを決められるので、慌ててボールを取られることも減っていきます。
「判断が速い」「サッカーがうまい」と言われる子は、特別なひらめきがあるというより、周りが見えているから選べている、ということが多いものです。見えていれば、迷う時間が短くなる。その積み重ねが、プレーの落ち着きにつながっていきます。
「見えてる?」と急かす前に
周りを見てほしいと思うと、つい「今の見えてた?」「なんで出さないの」と問いただしたくなります。でも、責められると体はさらに緊張して、視野はもっとせまくなってしまいます。よかれと思った声かけが、逆に働いてしまうことがあるのです。
まずは、お子さんがのびのびとプレーできる雰囲気を大切にしてあげてください。気持ちに余裕があるときのほうが、体の力も抜けて、周りが見えやすくなります。見える体をつくることと、安心してプレーできることは、つながっています。
力みが抜けた状態は、言葉より体で味わうほうが早い
体の力が抜けて余裕が生まれた状態がどんな感じなのかは、言葉で追いかけるより、一度体で味わってしまうほうがずっと早いです。「力が抜けると、こんなに周りが見えるんだ」と一度わかると、お子さんの中に手がかりが残ります。
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